エッセイ+写真集
河北秀也
著者の河北 秀也(かわきた ひでや)さんは、日本のアートディレクター。
東京藝術大学美術学部デザイン科教授。福岡県久留米市出身。
(出典:Wikipedia)
焼酎「いいちこ」の商品企画・ポスターなどのアートディレクションを手がけている方による
いいちこのクリエイティブに関する紹介。。。
かと思いきや、最初の1ページ目を見てみるとどうも様子がおかしい。
タイトル「セナの国葬」
そして写真がお城か教会のような煌びやかな屋内の食堂。そこにポツンといいちこが置かれた
「いいちこらしい」写真。(アイルランドの写真のようだ)
国を挙げて葬式を開かれる方というのは日本だとどんな人間だろう。
と、いいちこは勿論のこと、写真の内容はおろかセナといえばF1、という訳でもない葬式のお話。
はっきり言って「なんじゃこりゃ?」である。
その後も働き方の国内外の違いや文化の違い、文明の話、合理非合理の話、時間の話。。。
なんともとりとめのない話が続く。そしてその話に全く関係の見いだせないいいちこポスターの
写真が文章の横に淡々と掲載されている。
もう読んでいるうちに煙に巻かれるような、酔いそうな感じを覚えてくる。
この何とも言えないフワフワした感じがいつまで続くのだろう。。。と読み進めること半分。
ピタッとこれまで書かれてきた様々なことを下地にした一言が出てくる。
一部抜粋する
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タイトル「複雑な脳」
「毎日、ほんの少し実際の風景より、はるかに大量な風景の中に人間の脳は住んでいるのである。」
「九州で生まれた酒だから、九州の風景の中で写真を撮ればよいのでは、という単純な話にはらないのである。」
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フワフワした内容はただ酔って書いていたのではなく、とにかく複雑に色んなものが
絡み合った上で脳みそや今の社会が成り立っていることを表していた。
その上でじゃあいいちこはどうするの、ということに対する回答がポロっと出てくる。
あぁ、なるほど!と一旦スッキリすると、ここから一気にクリエイティブに関して畳み掛けてくる。
これはどこで撮った、どんな工夫で、どんな思いで作ったのか。そこで何を感じたのか。
これがもう、もうシビれる。
その面白さがグイグイと染み込んでくるし、ワクワクする。
こうしてとんでもない手間暇をかけて作り続けているいいちこポスター。
これは作った当初「焼酎らしくない」と周囲からは評判が良くなかったらしい。
でも、新しく焼酎を飲み始めた人にはその「焼酎らしさ」のイメージがまだない。
だったら新しいお酒の世界を作ろう。
というのがこのポスターの根底に今でもある意識であり、「いいちこらしさ」の原動力でもある。
今では盗まれたり掲出期限が過ぎたらもらえるように駅に予約する方もいるくらいの人気ぶり。
まさにしてやったり。モノづくりの醍醐味とも言える部分だろう。
結局のところ、この本で言いたいのは「これからも、いいちこをよろしく。」という事になる訳だが
ここまで来たらもう頷かざるをえない。
今度一本買ってこなきゃ。で、開ける前に写真撮ってみようかな、とワクワクさせる一冊。
あなたも一杯、是非どうぞ。
<余談です>
このいいちこポスター。このクリエイティブの雰囲気を「いいちこメソッド」と呼んで
色々試しているコンテンツがあります。
○いいちこがある風景は切なく見える、か?
http://portal.nifty.com/kiji/111025149183_1.htm
個人的に、こういうの大好きです。
(むしろ、いつも頭の片隅にある気がしてます)