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『私を離さないで』 ~ カズオ・イシグロ  Book*Book vol.030

皆さんこんにちは!
高円寺のCafe Cross Point (以下CCP)でよく演奏を
させていただいている、シンガー・ソングライターの
島田のぶひろです。

昨年からCCPで始まったBook*Bookという企画で、
お店にゆかりのある方たちがリレー形式で
本にまつわるエッセイのようなものを書いて
ネットやSNSなどにアップし、
実際の本を店内に置いてもらって
お客さんにも手に取ってもらう…

というようなことをやっていて、ここからは
しばらく僕が担当することになりました。
これが一回目ですね、どうぞ宜しくお願いします♪

普段は音楽ばかりやっている僕ですが、学生の頃から
読書も大好きで、大学の出身学科も一応(笑)、
英米文学科だったりします。

国内外の文学作品を色々と読んできましたが、
自分は特に外国の文学が好きなので、
それらの中から何冊かを、この先ご紹介していきたいと思います。

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さて、知り合った人に、僕が小説を読むのが趣味だ
と話すと、よく”一番好きな作品は?”と訊かれます。
そう言われても好きな作品はたくさんあって、
とても一つには絞りきれません…

ただ、質問された時に必ずといっていいほど頭に
浮かぶ小説があります。それがこれからご紹介する、
『私を離さないで』(原題:Never Let Me Go)
という英国の作品です。

『私を離さないで』

この本を書いたのは、カズオ・イシグロという日系
イギリス人の作家です。生まれは長崎だそうですが、
幼い頃に家族でイギリスに移住したため、
作品は全て英語で書かれています。

『私を離さないで』が日本語に訳されて発売された
2006年当時、僕はイシグロの作品では『日の名残り』
という小説を一冊読んだことがあるだけでした。
ちなみにこれもとても良い作品で、
アンソニー・ホプキンス主演で映画にもなっています。

ただそれを読んだ時点では、まだイシグロはたくさん
いる好きな作家のうちの一人、という感じでした。

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『私を離さないで』を書店で購入したきっかけは、
帯に書かれてあったコメントです。英米文学研究者の
柴田元幸さんが書いたもので、そこには”イシグロの
現時点での最高傑作”とありました。
その確信に満ちた言葉を、作品を読み進めて
いくうちに僕は深く納得していくことになります。

普通ならここであらすじの紹介…となるのかも
しれませんが、物語の筋を書いてしまうと
最初に読んだ時の感動や衝撃が薄れて
しまいそうなので、ここでは触れません。
特にこの作品に関しては、ある”理由”があって、
出来るだけ予備知識なしで読んだ方が
いいと思うからです。

始まりは静かで穏やかな青春物語だったのが、
読み進めていくうちに少しずつ違和感を感じる
ようになり、途中からは残酷なほど悲しく、
想像すれば震えるほど恐ろしく、なのに読んだ
あとは不思議と優しい気持ちに満たされる…

これだけでは何が何だかって感じですね(笑)。
でも実際に作品を読まれた方には、
この気持ちをわかってもらえるんじゃないかと
思います。

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ちなみに2008年、この本が文庫化された時の
帯コピーがまた秀逸でした。

“泣くとか泣かないとか、
 そんな程度の心の震えでは収まらない。”

『私を離さないで』

世間にあふれていた (今でもそうですが) 、
「泣ける=感動」→「感動=泣ける」
という風潮にうんざりしていたひねくれ者の僕は(笑)
このコピーに感動し、すでにハードカバーを
1冊持っていたにも関わらず、迷うことなく
この文庫版を持ってレジに直行したのでした。

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落ち着いた美しい文章で書かれたこの作品は、
CCPのようなカフェでゆっくり読むのにも
最適だと思います。お店にハードカバーと文庫版、
そして英語で書かれた原書を置いていますので、
是非、美味しい珈琲と一緒にお楽しみください。

『私を離さないで』

シンガー・ソングライター
島田のぶひろ


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