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そして生活はつづく

少し前のお話。
ふと思い立って井の頭公園の動物たちを見に行こうということになった。

ちょっと風は強いけれど天気はよく、動物園に行く前に井の頭公園をふらふら。
駅から近い池のある方からは水生物園があり、ここで魚や鳥を見て楽しむことができる。
(個人的にはここにいるオオサンショウウオの威風堂々感が好き)

一通り楽しんだらいざ動物園へ。の前にちょっと休憩。
ちょうど公園の出入り口にお茶屋さんがあったので入っておしることみたらし団子を食べることにした。

ここでぼーっとしていると、近くでテニスに興じていたであろうお歳を召した方々が集団で入店。
お店の常連らしく、座るか座らないかもハッキリしない内にビールやつまみをバンバン頼んでいく。
あぁ、運動の後のお酒。しかも昼間のうちからこりゃたまらんよね。と思う。

これがあれか。テニスの王子様ならぬ、テニスのおじい様のたしなみか。

なんてことをふと思いついたがために、のどかな公園のそばにあるテニスコートで
とんでもない必殺技を繰り出す高齢者の姿を思い浮かべてしまうこととなる。
(分からない方は「テニスの王子様」で検索。自分もそこまで詳しくないけど。)
あくまで自分はみたらし団子をゆっくり食べている人である。ポーカーフェイスではあるけれど、
頭の中は割と大変なことになっていた。

そんなくだらないことを考えるのが好きだったりする。
しかもこういうくだらなさは、くだり始めると坂をゴロゴロと転がり落ちるように止まらなくなるので
次第にニヤニヤしてしまったりすることもあるのだから始末に悪い。

とんでもない非日常感ではなく、普通に生活している中で出会ったり気付いたりする
くだらなくも楽しい出来事や思い。
これは交通事故のように出会うこともなくはないけれど、やっぱりそこにはくだらなさや楽しさを
感じるアンテナが必要であるし、取りこんで膨らませる余力や努力も必要だ。

「なにげない日常」の中には「なにげない日常」しかない。素晴らしいものなんてない。
その中から素晴らしさ、おもしろさを見いだすには、努力と根性がいります。
(中略)
毎日をおもしろくするのは自分自身だし、それをやるには必死にならなきゃ何の意味もない。

星野 源『そして生活はつづく』 文庫版あとがきより抜粋

そして生活はつづく

ホントにその通りだよ。と膝をたたいてしまう言葉だと思う。

高円寺は海外からの旅行者も増えてきている街だ。そんな方々には「高円寺の商店街」というのは
とてもエキゾチックに映るようで(なんてたって日本のインドだからね)、街の風景をパシャパシャと
写真におさめる姿もよく見かける。

自分にとってはなにげない日常の風景であり、特別なことなんて何もない。
でもそれが「面白い」と感じる受け取り方だって間違いなくあるのだ。
自分だって旅行で遠い場所へ行くとその街を写真に撮ったりするけれど、そこにあるみやげもの屋の
オッサンにはこの風景が生活の全てなのであって特別に思うことなんてないだろう。

なにげない時間の中で「おもしろさ」を見つけること。それは漫然と過ごすだけでは絶対に届かない感覚だと思う。
「努力」や「根性」と書くと汗臭いけれど、それは「愛情」にも近いのかもしれない。慈しむ姿勢。

彼は1981年生まれで自分と同い年。それだけにシンパシーを感じる部分がありながら、テレビだけではなく
街のいたる所で目にするし耳にするというとても「遠く」に感じる人でもある。

でも彼の文章を読んでみると、そのくだらなさにただただ笑ってしまう。

単純にあけっぴろげでおバカな人ではなく、その根っこというかくだらなさの中にある本音とか真面目さ。
そこはかとなく感じる人としての闇のような部分も含めて。
等身大な人としての温度感や距離感を感じる。それが彼の人気の土台になっているのかもしれない。

そんな扉の開け方があるのか。と笑っている自分に気付いた後に思わされてしまう。

くだらないの中に愛が 人は笑うように生きる
人は笑うように生きる

星野 源『くだらないの中に』より

ホント、その通りだ。


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7年目とこれから。

鈴木敏夫著『ジブリの哲学』を読んでいる最中なんですけどね。

ジブリの哲学

スタジオジブリと聞くとすぐに「宮崎駿」という3文字もくっついてくるイメージがあるのは
自分だけではないのではないか、と思います。
勿論それだけじゃないのは分かってます。
でもジブリというと青い地色にトトロのあのまるっとしたフォルムと一緒に脊髄反射のように頭に思い浮かんでくるんです。
あのおじさんの顔と強烈なキャラクターが。

そのただ一人のイメージで色んな面での凄みみたいなものがあるのですが、勿論全部を一人でやってきた訳ではなくて、
ずーーっと積み重ねてきた経験や知識を含めた表現の引き出しと、たくさんの人との出会いや運、流れのようなものがあって
作品を丁寧に一つずつ世に送り出してきたのですよね。

その空気感みたいなものを鈴木敏夫さんの第三者目線で感じられる一冊です。
本来はそのほぼ中心にいる人なのに、変に冷静な目線がそもそも面白い。「すごく大変」みたいにサラッと書いてあるけど、おそらく実際は想像を絶する状況だったんだろうなぁと思います。

あのジブリですら、あの宮崎駿ですら。
そうやってたくさん悩んで、人との関係を重ねて束ねていきながらものづくりをしているんだなと思うと
なんとなく元気になれる自分がいます。

7月1日で丸6年。あっという間かどうかは分かりませんが、7年目に入りました。
今年になってから大きく変えて、またここからいろいろとやっていくぞ!と思う中で
やっぱり自分たちだけではどうにもならんことも多いなぁと感じることが増えてきたような気もします。

色んな人と関わり合いを増やしながら、楽しみながら。名前がクロスポイントですから。
しっかり交わって束ねて、いい場所にしていきたいと思います。

引き続き、高円寺の隅っこではありますがカフェクロスポイントをよろしくお願いいたします。

そんな節目の時にこの本を読んでいる自分というのも、なんだか良い巡りあわせのような気がしています。
日々精進。勉強。
そして悩みながらも、いいと思える道を少しずつ進んでいけるよう頑張ります。


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CCPが所蔵している本のリストが分かります。

少し前に各種SNSにてお知らせしておりましたが、こちらでも改めて。

CCPが所蔵している書籍リストを(ほぼ)一覧できるようになりました。
ブクログさんの本棚のサービスを利用させて頂いております。

CCPが所蔵している本は「ブクログ」で確認できます。

絵本や写真集、漫画に雑誌、小説やエッセイ、その他旅行や生活にまつわるものや
食べ物、インテリア雑貨などに関するものなどさまざま。
ざっくりとカテゴリー分けもしてあるので、どんな物があるのかも探しやすいかと思います。

気になる方は是非お店で手に取ってみてくださいね。
そしてお店では時間が足りない!という方向けに貸し出しも行っておりますので、
お気軽にご相談くださいませ。

美味しいコーヒーやスイーツ、料理などは当然として、本ともより仲良くしていきたいと
思っております。
近いうちにブログで本のご紹介とかもできたら、と。

他にもこんなことできないの?とかして欲しい!とかありましたらお気軽にどうぞ!
皆様のお越しをお待ちしております。


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CCPで本を借りる場合。

図書館始めました。

ということでカフェクロスポイントで本を借りる流れをご紹介いたします。

図書館の利用方法

1)ポイントカードアプリ「mosta」を登録

ポイントカードアプリ「mosta」をお手持ちのスマートフォンにインストールしてください。
こちらを登録することで自動的に作られるナンバーを本の貸し出しにも利用いたします。

App store「mosta」
Google Play「mosta」

スマートフォンがなくても本を借りることはできますので、お持ちでない方は
お気軽にスタッフまでお申し付けください。

2)図書カード登録書に記入

スタッフから図書カード登録書を受け取り、必要事項を記入してください。
記入したカードと身分証明になるものを合わせてご提示ください。

3)会計時に本とmostaを提示

借りたい本とmosta画面を会計の際に提示。
mostaのアプリでポイントも一緒に付くのでカフェ利用が更にお得になります!

ポイントは10ポイント溜まると飲み物450円引き。
20ポイントでお会計から1000円引きというお得なカードです。

4)返却は次回ご来店時に。

貸出期間は1ヶ月。1ヶ月以内にお店まで返却をお願いします。

期限を超えた場合でも超過料金などは発生しませんが、お店含めお客様皆様の共有物です。
なるべく期限内での返却をお願いします。
また期間内に返却が難しい場合、延長したい場合はお店まで一度ご連絡ください。

貸し出しができないものも一部ございますが(漫画等)、その他にも不明点などありましたら
お気軽にスタッフまでご相談ください。

本との出会いもじっくり、ゆっくり楽しんでくださると嬉しいです。
よろしくお願いします!


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図書館始めました。

ブックカフェとして所蔵している本が少しずつ増えてきておりまして、その内容やジャンルも
広がってきております。

これからも焦らずじっくり増やしていこうと思います。

本棚

以前はなるべくお店にいる間に楽しめる絵本や写真集をメインにしておりましたが、
今は小説やエッセイなども含めて素敵なもの、じっくり楽しみたいものがたくさんあります。

これらは中々カフェの滞在時間中に読み終わるのは難しいのですよね…。

ということで、本の貸し出しをスタートいたします!
利用方法は別途まとめますが、ポイントカードのアプリと連携したサービスなので
よりカフェ利用含めてお得になります。
(もちろんアプリがなくても本を借りることはできますよ!)

ブックカフェらしさ、みたいなものをよりCCPなりに追求していけたらと思います。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。


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『カフカ、作品と人間』 ~ フランツ・カフカ  Book*Book vol.031

こんにちは!
シンガー・ソングライターの島田のぶひろです。

高円寺 Cafe Cross Point の Book*Book、
だいぶ間が空いてしまいましたが、
第二回目は大好きな作家、カフカの作品集を
ご紹介したいと思います。

カフカ

いきなりこの写真、”筑摩世界文学大系”だなんて
なんとも大げさでお堅い本ですが、よく図書館に
置いてある世界文学全集のようなもので、
このカフカの巻には彼が生前残した短編・中編の
ほとんどが収められています。

そんな立派な本が、家の近くの古本チェーン店で
なんと100円で売られていて、外箱や中身の状態も
良く、びっくりして即購入したのを覚えています。
さすがは○ック・オフ、物の価値に対して値段設定が
メチャクチャで、本当にありがたい限りです(笑)

**********

さて、カフカと言えばシュールで独特な作風で知られ、
例えば有名な『変身』という作品では、主人公の
グレーゴル・ザムザがある朝目覚めるとベッドの上で
大きな虫になっている自分を発見する…といった、
内容・設定ともに超現実的で不思議な物語が多くて、
人によっては難解と感じる方もいるようです。

どの作品も同じところをぐるぐる回って
結局どこに行き着いたのか分からないような
結末を迎えるものや、あるいはそもそも結末
なんてなかったかのような、身も蓋もない唐突な
終わり方をする作品ばかりです。

泣けるような感動的なストーリーや、ハラハラ
ドキドキさせておいて最後にはちゃんと伏線を
回収してくれる、よく出来たサスペンス作品を
好む人にとって、カフカの作品は

「は?」

 あるいは、

「で?」

となること必至なわけです(笑)

僕にとってもカフカの小説は、最初はやはり
よく分からないものでしたが、いつからか、
小説を読むのに何でもかんでも内容を理解して
分かったような気になることをやめてからは、
とても真に迫り、心を揺さぶる、
そんな物語になったのでした。

**********

数々の個性的な作品を残したカフカは、いったい
どんな人間だったのかなぁと少しずつ本人にも
興味がわくようになってきて、作者自身に
関する本や文献を読んでみると、とても
親しみやすく、愛らしくもある(?)
そんな人間像が見えてきました。

**********

チェコの首都、プラハで生まれ育ったカフカは、
今では20世紀最大の文学者の一人に挙げられる偉大な
作家ですが、本人はいたって普通の暮らしをしながら
職場である「労働者傷害保険協会」で毎日真面目に
働いて、午後の空いた時間に執筆をする、
そんな作家でした。

僕が大好きなエピソードがあって、
カフカはいつも週末になると友人たちと数人で
プラハのカフェでご飯かお茶をしながら、
自分の作品を朗読していたそうです。

周りでそれを聴いている友人たちは爆笑だった…

とその文献には書いてありますが、もしかしたら
「おいフランツ、お前ナニ訳の分かんないこと
 言ってんだよ~ ハハハ!」
みたいな、なかば馬鹿にした様な笑い
だったんじゃないかと、勝手に想像しながら
ちょっと哀れになってしまいます(笑)

それでも、たとえ時に馬鹿にされていたとしても、
変テコな小説ばかり書いていたカフカが決して
天涯孤独ではなく、友人たちに囲まれて
生きていたという事実を思うたびに、
なんだか泣きそうになるほど、
嬉しくなってしまうのです。

**********

そしてその友人たちの中でもカフカの一番の親友で、
自身も作家であったマックス・ブロートという
有名な人物がいます。

彼はカフカの存命中からその作品の芸術的な価値を
認めている一人でしたが、カフカが晩年、病を患って
マックス・ブロートに遺言を残します。
それは、

「僕が死んだら、僕が書いた小説や文章は
             全て焼き捨ててほしい」

というものでした。
その遺言を一旦了承するマックス・ブロートでしたが
カフカの死後、彼は全く逆の行動に出ます。

カフカが残した小説や散文を焼き捨てるどころか、
これはきっと素晴らしいものに違いないと確信し、
積極的に世の中に発表し、広めていくのです。

それはもしかしたらカフカが本当に望むところでは
なかったかもしれません。

あるいは逆に、もしかしたら友が
自分に代わって作品を世に広めてくれることを
確信していて、あえて”焼き捨てて”などと
ひねくれた遺言を残したのかもしれないし、
それは本人にしかわからないことですが、
少なくともマックス・ブロートのその ”誠実な裏切り”
とでも呼びたくなるような行動がなければ、
世界中の人達がカフカの作品に親しみ、
感動するようなことはなかったわけです。

このエピソードは、年月を経る中で
多少は美化されているかもしれませんが、
それでもなんて素敵な話だろうと感動してしまいます。

**********

すっかりカフカが好きになった僕は、2006年に東欧を
旅した際、彼が住んでいたという住居を訪ねてきました。
プラハ市内にあるそのアパートは、
小さいけれど可愛らしい、素敵な住まいでした。

近くの市庁舎前ではクリスマスマーケットが開かれていて、
その横にあったお洒落なブックストアで手に入れた
カフカの生涯を記した英語の絵本も、
Cafe Cross Point に置いてあります。
よかったら是非、ご覧になってみてください。

カフカ絵本

シンガー・ソングライター
島田のぶひろ


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カフェクロスポイントでフォトブックを作りました。

ものすごくお久しぶりの通常更新でございます。今回はフォトブックのお話。

カフェクロスポイントで一冊、フォトブックを作りました。
タイトルは『CCPのABC カフェクロスポイントの楽しみ方』というものです。
ざっくりご紹介すると、CCPではこんなことやっているんだよ、とか
こんな思いでやっているんだよ、というのを写真とテキストでまとめたものです。

CCPのABC

当店はギャラリーカフェですので写真とは何かと縁があり、私個人としては何冊か
フォトブックを作ったこともありましたが、お店としてはまだありませんでした。

オープンしてから3年半以上やってきて、試行錯誤しながらできることを増やしたり
ルールを変えてみたり。オープン当初とは色んな意味で様変わりしていると思います。

まだまだ至らない部分もありますが、ひとまずここで「今できること」をご紹介したものを
まとめてみたいなと思ったのがそのきっかけです。

CCPのガイドブック的なものとして、楽しみ方の「いろは」をお伝えしたいなと。
カフェクロスポイントはCCPとアルファベット3文字で略すことが多いので、それに合わせて
「ABC」というアルファベットでキーワードを考えました。

AからGまで7つを頭文字にしたキーワード。その内容は。。。読んでみてのお楽しみ。
店内に2冊設置しておりますので、お気軽に手に取って頂ければと思います。

CCPのABC

因みに。
今回はこちらのサービスを使ってみました。

http://yourbook.jp/

自由度は高いし装丁も良い質感です。作ってよかったなぁと思えます。


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『私を離さないで』 ~ カズオ・イシグロ  Book*Book vol.030

皆さんこんにちは!
高円寺のCafe Cross Point (以下CCP)でよく演奏を
させていただいている、シンガー・ソングライターの
島田のぶひろです。

昨年からCCPで始まったBook*Bookという企画で、
お店にゆかりのある方たちがリレー形式で
本にまつわるエッセイのようなものを書いて
ネットやSNSなどにアップし、
実際の本を店内に置いてもらって
お客さんにも手に取ってもらう…

というようなことをやっていて、ここからは
しばらく僕が担当することになりました。
これが一回目ですね、どうぞ宜しくお願いします♪

普段は音楽ばかりやっている僕ですが、学生の頃から
読書も大好きで、大学の出身学科も一応(笑)、
英米文学科だったりします。

国内外の文学作品を色々と読んできましたが、
自分は特に外国の文学が好きなので、
それらの中から何冊かを、この先ご紹介していきたいと思います。

**********

さて、知り合った人に、僕が小説を読むのが趣味だ
と話すと、よく”一番好きな作品は?”と訊かれます。
そう言われても好きな作品はたくさんあって、
とても一つには絞りきれません…

ただ、質問された時に必ずといっていいほど頭に
浮かぶ小説があります。それがこれからご紹介する、
『私を離さないで』(原題:Never Let Me Go)
という英国の作品です。

『私を離さないで』

この本を書いたのは、カズオ・イシグロという日系
イギリス人の作家です。生まれは長崎だそうですが、
幼い頃に家族でイギリスに移住したため、
作品は全て英語で書かれています。

『私を離さないで』が日本語に訳されて発売された
2006年当時、僕はイシグロの作品では『日の名残り』
という小説を一冊読んだことがあるだけでした。
ちなみにこれもとても良い作品で、
アンソニー・ホプキンス主演で映画にもなっています。

ただそれを読んだ時点では、まだイシグロはたくさん
いる好きな作家のうちの一人、という感じでした。

**********

『私を離さないで』を書店で購入したきっかけは、
帯に書かれてあったコメントです。英米文学研究者の
柴田元幸さんが書いたもので、そこには”イシグロの
現時点での最高傑作”とありました。
その確信に満ちた言葉を、作品を読み進めて
いくうちに僕は深く納得していくことになります。

普通ならここであらすじの紹介…となるのかも
しれませんが、物語の筋を書いてしまうと
最初に読んだ時の感動や衝撃が薄れて
しまいそうなので、ここでは触れません。
特にこの作品に関しては、ある”理由”があって、
出来るだけ予備知識なしで読んだ方が
いいと思うからです。

始まりは静かで穏やかな青春物語だったのが、
読み進めていくうちに少しずつ違和感を感じる
ようになり、途中からは残酷なほど悲しく、
想像すれば震えるほど恐ろしく、なのに読んだ
あとは不思議と優しい気持ちに満たされる…

これだけでは何が何だかって感じですね(笑)。
でも実際に作品を読まれた方には、
この気持ちをわかってもらえるんじゃないかと
思います。

**********

ちなみに2008年、この本が文庫化された時の
帯コピーがまた秀逸でした。

“泣くとか泣かないとか、
 そんな程度の心の震えでは収まらない。”

『私を離さないで』

世間にあふれていた (今でもそうですが) 、
「泣ける=感動」→「感動=泣ける」
という風潮にうんざりしていたひねくれ者の僕は(笑)
このコピーに感動し、すでにハードカバーを
1冊持っていたにも関わらず、迷うことなく
この文庫版を持ってレジに直行したのでした。

**********

落ち着いた美しい文章で書かれたこの作品は、
CCPのようなカフェでゆっくり読むのにも
最適だと思います。お店にハードカバーと文庫版、
そして英語で書かれた原書を置いていますので、
是非、美味しい珈琲と一緒にお楽しみください。

『私を離さないで』

シンガー・ソングライター
島田のぶひろ


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お気に入りオムニバス  Book*Book vol.029

こんにちは、ヤスダプレゼンツB*B、最終回でございます。

今回は私のお気に入りの本を
見境なくご紹介させていただこうかと思います。

と言いましてもワタクシそもそもあまり本を読む方ではないので
そうたくさん持っているわけではないのですが。

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100万回生きたねこ
佐野洋子/講談社
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100万回生きたねこ

言わずと知れた名作。
子供の頃はなんだかちょっとした怖さを感じていたのですが
大人になってから読むと涙が出ます。
どんな話だったけー?と思う方はぜひもう一度読んでみてください。

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LA QUINTA CAMERA ラ・クインタ・カーメラ
~5番目の部屋~
オノ・ナツメ/小学館
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LA QUINTA CAMERA ラ・クインタ・カーメラ

漫画家オノナツメさんの短編集。
とてもホッコリします。
イラストは簡素なんですが線がオシャレで上手いなぁと思う作家さんです。

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植物図鑑
ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS
東 信、椎木俊介/SEIGENSHA ART PUBLISHING
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植物図鑑

植物による造形表現を行う東さんと
カメラマン椎木さんのユニットによる花の写真集です。
とてもキレイなのに、ゾクッとするような生々しい表紙に一目ぼれして購入しました。
「カラフルな生き物」って感じです!
植物同士の独特な組み合わせがとても面白いです。

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鏡の国のアリス
ヤン・シュヴァンクマイエル、ルイスキャロル
/エスクァイアマガジンジャパン
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鏡の国のアリス

アニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品。
コラージュによるちょっとグロいような不快なような、シュールな絵本です。
これも表紙の異様さに吸い寄せられて購入しました。
が、実は完読していません。
何度かトライしたのですが、途中で絵にあてられるというか・・・
なんだかクラクラしてきて読み切れないのです。
でも見ごたえがあることは間違いありません。

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今日の芸術
岡本太郎/光文社
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今日の芸術

アートというものに興味はあるけど、いまいち理解できないという人におススメの本です。
岡本太郎と聞くと、「変人」といったイメージを持つ方は結構多いのではないでしょうか?
そんなこと全然ありません。
むしろとても真面目に芸術に向き合い、かつ一般の人々にも
アートとは何ぞやということを一生懸命伝えようとした人なんだと思います。
これを読むと、アーティストと呼ばれる人たちが
いったいどういった人種であるのかちょっと掴めるじゃないかなぁと思います。

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プチ哲学/中公文庫
四国はどこまで入れ替え可能か/新潮文庫
クリック/講談社
佐藤雅彦
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佐藤雅彦

佐藤雅彦さん、好きです。
日々いろーーーんな小さなコトに着目している人なんだろうなぁと思います。
「気づき」の達人なんだろうと思います。
イラストもカワイイ!!

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ないもの、あります
クラフトエヴィング商會/筑摩書房
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ないもの、あります

堪忍袋の緒、左うちわ、舌鼓 などなど・・・
「本来は世の中に実在しないと言われる商品を、読者のために古今東西から取り寄せた」とのことで
この本はそんな商品の”目録”となっています笑。
クラフトエヴィング商會さんの本は、内容も面白いのですが
本の装丁がいつも素敵です。

はい、ジャンル問わず一挙にご紹介させていただきました。
久しぶりに本棚をあさると楽しいですね!
読み返そうかと思う本もいくつか出てきたり。

ではでは、拙い文章でしたが
お付き合いどうもありがとうございました!

ヤスダ


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「ヨシタケさん」  Book*Book vol.028

こんにちは
前回に引き続きヤスダがお送りいたします!

今回は私のお気に入り作家さんをご紹介させていただこうかと思います。

お名前はヨシタケシンスケさん。
私の大学の先輩です。

専攻も年代も違うので大学内でお会いしたことはなかったのですが、
学祭の時にOGOB展のようなものが開催されており
そこで作品を見たのがファーストコンタクトでありました。

ちょっとクスッとしてしまうタイトルにもセンスを感じます。

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【しかもフタが無い】/PARCO出版
【やっぱり今日でした】/ソニー・マガジンズ
【じゃぁ君が好き】/主婦と生活社
【そのうちプラン】/遊タイム出版
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ヨシタケさん

これらは全てイラスト集です。
ヨシタケさんが日々感じたこと・見たことを
メモ帳の隅にさらっと描き留めたイラストを集めたのだそうです。

とにかくイラストがカワイイ!
そして観点が面白い!
どちらかと言うとちょっとネガティブなものが多いのですが、
それでもなんだかクスッとしてしまうのです。

共通の知人を通してご本人にお会いしたこともあるのですが、
イラストとご本人のギャップがすごくて驚きました。
こんな可愛らしいイラストをこんな方が描いているのか!と思うと
それまた妙な可愛さが込み上げてくるような・・・そんな方です笑。

さらに、最近は絵本を出版されました。

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【りんごかもしれない】/ブロンズ社
【ぼくのニセモノをつくるには】/ブロンズ社
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【りんごかもしれない】【ぼくのニセモノをつくるには】

この「りんごかもしれない」は、昨年なんと栄えある
第6回MOE絵本屋さん大賞第1位に選ばれております。

2作とも、お子さんをお持ちの方にぜひおススメしたい!

日ごろ身近にありすぎて考えたことのないようなことに対し、
「これはなんだろう?」「ホントにそうなのかな?」
と考えることの面白さ・大切さを気づかせるような作品です。
こう言うと説教くさい本のように聞こえてしまうかもしれませんが、全然そんなことありません。
イラストのかわいらしさも手伝って、とてもサラリと読めてしまいます。

でも私はこの2冊の絵本を読んで、
ヨシタケさんのアーティストとしての視点がきっちり反映されているな、と思いました。

ヨシタケさんはもともと在学中は「総合造形」という分野を選考しており、
大雑把に言うところの現代アートに分類される作品を作ってらっしゃいました。
(これまたネガティブだけどとても面白い作品でした笑)

現代アートはあまりに裾野が広すぎ、また多少勉強しないと分からないところもあるので
一般の方には「とりあえず変なもの・訳の分からないもの」と思われがちです。

でも、アートの役割の一つに、
「疑問を持たせること」「考えるきっかけを作ること」「物事の“見かた”を提案をすること」
なんかが挙げられると思います。(私の見解ですけど)

つまり、アート作品には作家が思う
「これはなんだ?」とか「これってこうだよね」とか「こう見たら面白いんじゃないか?」という
視点が表現されてるんですね。(もちろん全部がそうではないですが)

ヨシタケさんの絵本には、そういった作品を作る前段階である
「発想のしかた」が描かれてるなぁと思いました。

あと、ヨシタケさんは現在個人イラストレーター以外に
「パンタグラフ」というジオラマやコマ撮りアニメCMなどを作る
クリエイティブユニットでお仕事をされていて、
そこの作品もとっても可愛いのでお時間のある方はぜひ見てみてください!

▼パンタグラフ
http://pangra.net/diorama/index.html

今回は本というより完全にヨシタケさんのプレゼンですね笑。
すみません、ファンなもので・・・。

いかがでしたでしょうか?
ご興味を持っていただけましたら幸いです♪


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